2

頭の中で「美味しそう」と「社会的な死だぞ」が同時に聞こえました。

咄嗟に感覚のシャッターを下ろし、にこやかにその時間をやり過ごしました。

その場を離れ一人になった時の安堵感ときたら!

全身に走った緊張感ときたら!

蹲りたいと思いましたが人目がありました。

車に戻ってからはしばらく身動きが取れませんでした。

どうしよう

どうしようもこうしようもありません。

落ち着いて、家に帰って、人間の食べるものだけを食べる生活を送る

それだけです。

車に置きっぱなしだった水はぬるくなっていました。

水が通った時、喉の緊張がほぐれ、そのままどっと全身の力が抜けました。

少し冷静になってからどこが美味しそうだったのだろうかと姿を思い出そうとしましたが朧げなのです。

その人を〆て?(無理!)

血抜きして?(無理!)

切…無理無理無理!

お父さんお母さん技術を伝えないでくれてありがとう